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生き物から学んだことは数知れず
肌感覚、直感、豚舎に入るとよくわかる
分娩舎は特に。
出産間近の母豚はゆっくり寝てることが多く、出産後の母豚は子どもを守るために神経が研ぎ澄まされてる感覚。
不用意に近づけば、吠えられる。同じ舎にいる豚たちがいっせいに臨戦体制みたいに、こっちを睨む。
だから、入る前に「入るよー、驚かないでねー」とか声かけたりする。
見えないから不安になる。
前に出ていって、
驚かせてごめんよー。
私は敵じゃない。
私はあなたたちより弱いんだ。
っと屈んで顔を見上げて目を合わす。
それまでのピーンとした緊張が緩んでいく。
立ち上がった母豚も「なんだよ、びっくりさせんなよ」とばかりにゆっくり腰を下ろして横になっていく。
対峙すれば本能的に「敵対」してしまうから、なるべく真正面は避ける。
決して敵ではないけど、気を抜けばすぐに怪我はするし、「死」はすぐ隣にある。
だから、相手が闘争心に満ちた目をしてたら、悠然と構えつつ合わせた目線は逸らすことなく相手の動きを観察する。
弱っていたら寄り添う。
いつのまにか身についたものがたくさん。